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水のはなし
2026.08.03
冬夏が店を構える御所東には、古くから京都の名水と謳われる井戸水が点在します。茶人が若水*を汲むことで有名な「梨木神社」、南へ下ると「下御霊神社」があり、冬夏が建つのはそれらをつなぐ水脈の上で、敷地には代々受け継がれてきたと思われる古い井戸があります。実はコロナ禍の折に掘り直しましたところ、心なしか甘みが増しているようです。
1億5000万年以上前に堆積した岩盤層の上に造られた古代都市、京都。豊富な地下水の量は日本最大の琵琶湖にも匹敵すると言われています。溌溂と湧き出るやわら水は、茶水として是れこの上ない相性で、冬夏では、すべてに汲みあげた湧水を戴く贅沢が叶います。
7月いっぱいで祇園祭を見送り、蝉時雨がさんざめく大暑この頃。連日のように夕立が街ゆく人の足元を奪い、しばし軒先で雨が鎮まるのを待つ人々を見るのも、京都らしい風景です。自然界に循環する水は古代より変わらず、雨から地下水へ、川から海へ、そして雲へと、形を変えながら天と地を回り続けていると聞きます。グラスの水も、道を濡らした雨も、神事の祈りを受けた神水も、源同じくすると思えば、一服のお茶は、水を巡る壮大な旅の途中に、私たちを連れ出すのです。
若水|元旦の早朝にその年初めて汲み上げる神聖な水のこと。一年の邪気を祓い、心身を若返らせる力があるとされており、茶人はその水で初茶を点てて新年を祝います。